【2025年10月号】一緒に課題を解決する
- Kana Inamura
- 9月30日
- 読了時間: 4分

ようやく台風が過ぎ去った後、佐久にも秋の気配がやってきました。
今年の夏は本当に雨が少なく、毎日のように灌水作業が必要な日々が続きました。
台風とともにやってきた久しぶりの雨がどんなに嬉しかったことか、
思わず周りの農家さんを呼び集めて一緒に小躍りしたいような気持ちになりました。
短期スタッフとして5月からのらくらに入り、 農業初心者の私が畑に立つようになって、 最初に実感したのは、「命の時間」を感じるようになったことです。
若い苗はまるで赤ん坊のようにまっすぐ空を見上げ、 光を求めて伸びていく姿が無垢でひたむきで、 「生きること」そのものを体現しているようです。 そしてやがて、瑞々しさを失い、病み、終わりゆく命の気配を放つ姿に出会います。
それでも懸命に生き続けるその姿は美しく、 かつて誇らしく立っていた人が静かに衰えていく― そんな人間の一生とも重なり、 小さな命のダイナミズムを感じながら日々畑に立っています。
私がこの場所を選んだ理由はいろいろありますが、 多分一番は、このチームの面白さだと思います。 私は前職ではイベントやCM・映画の制作、キャンプ場運営の仕事をしていました。 たくさんの人が関わり、新しい空間やコンテンツを組み上げる。 役割の異なる人たちが力を出し合い、一人では見られない景色を見せてくれる。 チームで課題に挑むその化学反応のような面白さが、私はずっと好きでした。
代表の萩原さんの本にあった「一緒に課題を解決する」雰囲気に惹かれ、 実際に肌で感じてみたいと思い、一員になることを決めました。
ある日、スタッフの一人(サリーさん)に
「エンターテイメント業から農業って、だいぶ畑違いでは?」と聞かれたことがあります。 でも、農業にもエンターテイメントの要素がたくさん含まれていると思っています。たとえば、
⚫︎畑を舞台に、季節ごとの変化を物語として届けられること
⚫︎天候や自然の影響を受け、予想外の展開があるリアルなドキュメンタリーであること
⚫︎今年の天候でできた味、この瞬間に収穫した作物という二度と同じものがないライブ感があること
⚫︎土に触れる感触や風の匂いを通じて生命を感じる身体性があること
農業はまさに、土まみれのエンターテイメントなのだと思うのです。
気づけばあっという間に5ヶ月が過ぎようとしています。 本の中にあった「一緒に課題を解決する」という言葉の意味を少しずつ体感しています。 萩原さんはいつも「これってどうかな?どう思う?」と意見を聞いてくれます。 きっと心の中には答えを持っているのに、 「そうだよね、いいね。でもこういう考えもあるよね」 そんなふうに伝えてくれるから安心して取り組めるのです。
関わる一人ひとりのポテンシャルを信じている、それが伝わります。 何か問題があった時も誰かの責任を追求するのではなく、 どうすれば乗り越えられるか、繰り返さないか、皆にとって良い形は何か――
そこを一緒に考えるスピード感が、とても心地よく、 その萩原さんの姿勢が農場全体に流れているから、皆がのびのびとポジティブマインド全開。 作業が山積みの時も先輩方は「困っちゃったなぁ〜」と明るく言います。 決して軽んじているのではなく真剣に考えているのに、肩の力が抜けていて、 笑顔で「まぁ、やるしかないなっ」と言うのです。 そうすると、こちらも一緒に「なんとかしよう!やったろうか!」と思えるのです。
楽しそうな所には人が集まる、単純な事なのにとても大きな力があります。
そして、もう一つ。誰が偉いとか立場が上だとかにとらわれず、 フラットに「より良くなること」を目指して関わり合えていることを、日々の中で感じます。それは農場のスタッフ同士だけでなく、日々関わってくださる取引先の方や、 1日だけ作業を手伝いに来てくださる方とのやりとりの中でも同じです。 困っていることも率直に話し合い、事実をオープンに共有する。忙しい時にはどうしても色々なことをおざなりにしてしまいがちですが、 やっぱり「伝え合うこと」こそが大切なのだと実感します。 作業の合間に、疲れている人に声をかけたり感謝を伝えたりする。 そんな小さな思いやりが自然に交わされるのも、農場ならではの光景です。 派手なことや特別なルールがあるわけではないけれど、 そうしたシンプルな姿勢が、なんだか皆をひとつにしている気がするのです。
畑に出れば、土の匂いがして、風が吹いて、野菜たちは今日も空に向かって伸びている。 その姿に元気をもらいながら、さぁ今日もご機嫌に。
――「よっしゃ、やったろうぜ!」そんな気持ちで畑に立ちます。
岩本桃子(もっち)





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