【2026年1月号】憧れの農家で見た「人と組織」
- Kana Inamura
- 3 時間前
- 読了時間: 3分

皆さん、こんにちは。
期間スタッフの川又です。
私が農業の世界に入ったのは6年前。
知り合いの農家から「手伝ってくれない?」と声をかけられたことが、きっかけでした。農業に興味があったわけではなく、「せっかくだし、一度やってみるか」くらいの軽い気持ちでした。
そうして始めた農業ですが、決して楽しいものではありませんでした。畑に出れば何をやっても怒られてばかり。何度辞めようと思ったか分かりません。農業のスタートは自分のポンコツさを突きつけられる経験の連続でした。
そんな中、農業の楽しさを教えてくれたのが、趣味で始めた家庭菜園でした。種をまき、成長を見守り、収穫して食べる。その一連の営みに、なぜか心が満たされました。いつの間にか「もっと植物や土壌のことを理解したい」と思うようになっていました。
農業を続けながら、私の中には「植物への好奇心」と、「自分は農業の現場で働くことに向いていない」という思いが、常にありました。
その矛盾した感情を抱えたまま、今年で39歳、30代最後の年を迎え、「これからの生き方、働き方を見つめ直したい」、そして「農業をやめる前に、憧れの農家を見に行きたい」と思うようになりました。
その時、一番最初に浮かんだのが、「のらくら農場」でした。有機農業の世界では誰もが知る有名な農家。「いったいどんな農業をしているのか自分の目で確かめたい」そう思って、期間スタッフに応募しました。
のらくら農場で私が見たかったのは栽培でした。有機農業界のトップを走る農家がどんな技術や資材を使い、どんな品質の作物を生み出しているのか興味があったのです。
実際に畑に立つと、野菜の生育には驚かされることばかりでした。大きく厚みのあるケール、アーチの中を覆い尽くすほど実ったインゲン豆、桃のように甘い蕪。これまで見てきた野菜とは、“別物”と言えるほど違っていました。

栽培技術によって、こんなに大きな差が生まれる。農業の奥深さを改めて実感し、好奇心が掻き立てられました。
しかし、もっと驚いたのは「人と組織」でした。
農場では、誰かが怒鳴ったり、感情的に叱ったりする場面を見ません。ミスが起きても個人を責めるのではなく、「どう改善するか」を組織全体で考える。それが当たり前になっています。
代表の萩原さんの接し方も印象的でした。上から押さえつけるのではなく、寄り添いながら導くような姿勢。
最初は「こんな穏やかな空気で本当に仕事が回るのか?」と疑問に思いました。けれど現場には活気と、ほどよい緊張感があり、みんなが生き生きと働いています。
個人の欠点よりも長所に目を向け、お互いの弱点を補い合う関係性。恐怖で人を動かすのではなく、心理的に安心できる環境の中で主体性を引き出す組織づくり。それは、これまで経験してきた現場とは、まったく異なるものでした。
私自身、のらくら農場で働く中で一度も叱られたり、怒鳴られたことがありません。最初のうちは、ミスをしても責められないことに、むしろ落ち着かずムズムズしました。でもその非難されない、批判されない空気に少しずつ肩の力が抜け、自然体で働けるようになっていました。そんな経験を通して、これまで自分が当たり前だと思っていた“働くことの常識”が少しずつ変化しているのを感じています。

のらくら農場で過ごす時間は、農業の学びに留まらず、働くことへの固定観念や人との関わり方を考え直す機会になっています。





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