【2025年11月号】「見えてます!」
- Kana Inamura
- 11月2日
- 読了時間: 3分

この音頭がかかると、真っ暗の中に一筋の光が見えてほっとしたような気持ちと同時に「おっしゃ、やったるで!」と、力が漲ってきます。
THEのらくらワード「見える」。たくさんの野菜を皆様にお届けするための小分けのとき、その野菜の袋数管理をしている担当が口にすることが多いです。時々畑で聞くこともあります。
例えば、春菊を800袋つくるとします。はじめに「800」と数を聞くと、その数に圧倒されます。収穫された春菊を雑草や虫をよけて調整し、130gに計量し、袋詰めをする。これで1袋です。とにかく調整しないと始まらないので調整し続けます。
調整し続けてどれくらい時間が経ったのかもわからない時に、
「もう見えてるよ!」
と、袋数管理している担当が口にすると、相当終わりが近いことが伝わります。
農業で痛感するのは、この「見える」ことはそうないということ。私は農業はより自然に近い業であると思っています。都会にいると何事もきっちり決まっているように見えますが、自然は多様性が当然です。つまり「曖昧が当然」でもある。また、曖昧な権化のひとつが、ワタクシです。
ざっくり申しますと、いわゆるLGBTQ+の「Q+」の存在です。名前に当てはめるとノンバイナリー。体にすこし違和感はありますが、男性になりたいわけではない。
のらくら農場では服装について、男女分けたような服装はありません。農業だから当たり前と思われるかもしれないですが、私は意識していませんでした。オシャレじゃない、という意味でなく、畑でドロドロになる前提のもと、じわりとその個性が滲み出ます。のらくら農場ファッション集を出したらいいと思ってます。それぞれの色があり、かわいいし、かっこいい。
私はスカートも履きますが、そのような女性の格好を強制されることが嫌な方がいます。男性でスーツが嫌と言う方もいるでしょう。 のらくら農場には寮があり、今5人で住んでいます。寮メンバーのうち、私含めた3人が、農業を選択している理由として「服装の自由度」に同意してくれました。「服装の自由度」は意外とメリットのようです。
そのような曖昧な存在の私は、愛玩動物看護師の国家資格を保有しています。イヌやネコ、ウサギなどのエキゾチックアニマルと共に暮らすヒトのそばで、動物病院や訪問動物介護などの仕事をしてきました。農業と全然違うやん、と私はまったく思っておらず、むしろ命に囲まれていることを実感する日々です。自然の曖昧さをからだを使って実感しており、驚きすらあります。
農業は考える対象がヒトだけではないところがまた難しいと思っています。天気、虫、野生動物、微生物、ウイルス、カビ、植物自体の生理現象、ヒトがつくっている市場など。めっちゃVUCA(ブーカ)です。
VUCA(ブーカ)とは、「変動性(Volatility)」「不確実性(Uncertainty)」「複雑性(Complexity)」「曖昧性(Ambiguity)」の頭文字を取った言葉で、先行きが予測困難な現代の状況を指します(Google AI による概要を一部改変)。
畑の現場で、考える対象をぜんぶ見つつその時の仮説立て最適解と思われるものを己の身を使い実行していく。ここは戦国の世か!??と、毎回ひそかにひとりツッコミしています。けれど、だからこそおもしろいと思っているところです。
さあさあ。今日も「見えてます!」の音頭を聞くために、お客さまのために、畑に収穫に行ってきます!
武田真優子





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