top of page

【2023年9月号】「メンタルヘルスの観念から見た農業をするということ」


↑かぼちゃ収穫にて


はじめまして!いっちゃんこと大村一誠です。前職は理学療法士として病院勤務をしていました。そこでは精神疾患をもたれた患者様との適切な距離感などがわからず、自身も精神疾患を患いました。その影響もあり仕事を退職し家に引きこもっている時に、祖母から「いっくん、家におってもひまやろ、畑手伝ってくれんか」と言われ、気持ち的にはしんどかったですが、手伝うことにしました。すると2〜3日働いた後に、「あれ空ってこんなに青いんだ、ご飯ってこんなに美味しいんだ」と感動したことを覚えています。また、病院勤務の際に患者様に対して、「お昼ご飯もうすぐだから頑張りましょう!」と私が言った際に、「あんな不味いものを楽しみに出来るか!」と言われて、リハビリで筋肉もつけなけばいけないのに、栄養不足で筋肉がつかず運動療法が水の泡、なにより患者様自身の楽しみがないという状況に疑問が湧いたことから、食の大切さに気づき農家で働くことに興味を持ちました。どうせならレベルが高そうなところでと思い、農家の求人サイトからのらくら農場を見つけ現在に至ります。


始まって数ヶ月、環境の変化に弱い私は、精神的不調を起こしていました。しんどいなぁと感じている時に、玉ねぎ収穫がありました。玉ねぎ収穫は、特にスピーディーな作業で、チームで連携し、重いコンテナを運ぶ重労働です。炎天下ということもあり、私は耐えられるか不安でしたが、いざはじまってみると、チームで声を掛け合ったり、滝汗をかいて作業を終えた時に、憂鬱だった気分が嘘のように、素晴らしい充実感と幸福感を感じていました。

自分なりにこの感覚を深掘ってみました。チームで働き、役割を与えられ、責任感を持つことによって、自分が必要とされている感覚があったこと。加えて、日光を浴びながら、土に触れ体を動かし、玉ねぎ収穫を終えた時には、つらいと思っていたことが自分にもできたという達成感があったこと。自己肯定感の上昇が充実感と幸福感に繋がったのではと思います。


この経験から、私は自己肯定感の上昇と体を動かしエネルギーを使うことがメンタルヘルスに良い影響を与えるのではないかと考えます。現在メンタルヘルスに不調を抱えている方が増えてきていますが、その原因は一概には言えませんが、私は二つ考えていることがあります。


一つ目は社会的な能力(例えばテストの点数が高い、運動ができるなど)が高ければ賞賛され、逆であれば賞賛されない。能力があがらなければ人から認めてもらえない、自分は人より劣っていると感じ、生存本能的に不安を感じるということが起こっていると私は考えます。


二つ目はエネルギーの停滞。畑は使用しなければどんどん荒廃していき、良い作物を作れなくなっていきます。人間の体も同じだと考えていて、頭と体を動かし血液を巡らせることで、新陳代謝を促し健康を保ちます。今世の中は便利になってきており、体を動かす機会が減ってきています。また、自然と離れた環境でも生活できるようになってしまったことで、自然からの癒しを享受できなくなってきていると考えます。


この二つを解決するために有効だと思うのが農作業をするということです。一つ目の自己肯定感の低下には、作物の管理作業〜収穫作業までが有効だと考えます。ケールの担当している同僚が、追肥や自然由来の薬剤を撒いたり作物の管理作業することで、目に見えて効果が表れていると、とても嬉しそうな顔で喜んでいました。このエピソードから作物の管理作業は自分は何かに影響を与えられると感じることが出来、自己肯定感の向上に繋がるのかもしれないと感じました。


そして、収穫作業は二つ目のエネルギーの停滞の解消に繋がると考えています。まず、外で体を動かし作業をすることによって、全身に血液がめぐり、新陳代謝を促します。玉ねぎ収穫がまさにこれでした。あそこまで体を追い込んだことで、エネルギーの循環が起きて気分が爽快になったと思います。また畑・森を見ることは、人間の生存本能的に、食糧があると感じ、安心感に繋がるというデータも出ているそうです。そのため、畑での収穫作業はメンタルヘルスにとても良い影響を与えると思います。


私が言いたいのはメンタル不調を抱えた人が、農作業をすることが有益ではないかということです。ですから、家庭菜園やコミュニティガーデンなどであれば、上記の二つを解決しやすいのかもしれません。


私自身も祖母の農園とのらくら農場で働くことによってメンタルが回復したので、この効果を、世の中の人にもっと知ってもらいたいと考えています。しかし、この考えは正直に言うと、都合よく解釈している部分もあると思います。実際に、農家の経営者は大変なストレスがかかると思います。あらゆる機材の高騰、気候変動、人手不足、一晩で作物がダメになるなど挙げたらキリがないほど色々な問題があり、良い面ばかりではありません。むしろ、ストレスが大きいのではないかと。代表の萩原さんには本当に頭が上がりません。

来年働く就労支援施設にて、施設の利用者様に対して自然と触れ合い体を動かす機会を作っていきたいと考えています。農業って大変だけど、気持ちいいなと感じてくれる人が少しでも増えていけば、色々な業種の方が農業と交わり、メンタル不調を訴える人が世の中で減っていくのではないかと考えています。


bottom of page