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【2023年11月号】「不器用だけど、がむしゃらに生きている」 



初めまして。今年の期間スタッフとしてのらくら農場で働いている久保未希子です。


新卒で6年間働いた障害者施設を退職して家にいた時に、佐久穂町に移住した大学の先輩が誘ってくれ、遊びに来たのがこの町との最初の出会いでした。


人の人生を預かるという責任の重い仕事に、身も心も投じて働いてきました。周りにも認められたくて、夜も遅くまで働いて、少しずつ心と体が壊れていくことを自覚しながらも、「仕事ってそういうものでしょ?」と自分に鞭打って…でも、気づいたら毎日泣きながら仕事に行くようになっていて、結局家から出られなくなっていました。


母親が心配そうに、でも黙って私の様子を伺っているのを感じながらも、布団から起きられないし、ご飯も食べられない。眠っている間だけは、嫌なこともこの先の不安からも逃れられるのに、眠れない。30歳手前の同世代は、仕事で昇格したり、結婚して子どもができたり…そういった姿はとても眩しく、自分一人だけ置いてきぼりになったようで、夜中に誰もいない台所で泣いてばかりいました。


退職して少し元気になったころに来た佐久穂町は、空気が澄んで、出会う人も優しくて、私の心を満たしてくれました。先輩が「ここの玉ねぎ大好きなんだー辛くないんだよ!」と出してくれたのが、のらくら農場の玉ねぎでした。そこで働くメイちゃんのことも教えてくれ、同じくらいの年齢の人たちが切磋琢磨して働いている様子に心惹かれました。


その後、保育園で働いたりもしましたが、佐久穂町のことが忘れられなくて、初めて来てから3年たった今年、のらくら農場での採用が決まり、念願叶ってこの町に来ることができました。


農業の仕事は初めてです。


佐久穂町に引っ越すにあたり、今までと同じような福祉の仕事に就くことも考えましたが、今までとは違うことをやりたくて農業を選びました。


農場では、限られた時間で、どれだけの野菜を出荷できるかが求められる中で、もともと動きも遅く不器用な性格の私は、小分けのスピードが遅かったり、重いものを持てなかったり、思うように動けない場面がたくさんあります。できない自分が悔しくて、「あーもうなんでできないのよー!」と落ち込んだりと、なかなかタフな日々です。


それでも少しずつできることが増えてきました。


特に、個人のお客様に直接送るちいさな野菜セットを箱詰めする作業は自信を持って取り組める仕事になりつつあります。ちいさな野菜セットは、週に4日、多い時で1日100件近くの野菜セットを主に二人で2時間ほどかけて作っていきます。入れる野菜を間違えたり、入れ忘れや多く入れてしまわないように気をつけたり、配送中に箱の中で野菜同士がぶつかって傷んだりしないように野菜の配置を考えたり、送り状を間違えないようにしたり…と気の抜けない集中力を要する作業で、慣れるまでに時間がかかりました。でも、野菜セットの中身やレシピを考えている先輩たちの「美味しい野菜を届けたい」という強い気持ちが伝わってきて、一緒に「こうしたら綺麗に入るかな?」などと相談しながらセットを作り上げていく作業は楽しく、自信のもてる仕上がりになった時はとても嬉しいです。出荷場には、先輩が書いた「開けた瞬間のワクワクを届けよう」という言葉が貼ってあります。その言葉に沿えるように思いを込めて野菜セットを作っています。


週3回、大手宅配生協などへの出荷で、大量の野菜を出荷する日があります。 契約している 大型トラックが朝10時に来るのですが、いつも間に合うかどうかの瀬戸際です。トラックが来てしまっても、まだ用意が間に合わずに、運転手さんが出来上がったコンテナをリフトで積み込んでいるギリギリまで、野菜の袋詰めや小分けを続けている時があります。


また夕方には、毎日佐川急便がお店卸用の荷物を、続いてヤマト運輸が個人宅配向けの荷物を週4回取りにきます。佐川急便が来る時間が迫っている中、みんながお店に送る野菜を段ボールに詰めている時、私は「ちいさな畑セット」の梱包をしてヤマト運輸の集荷時間と戦っています。みんなが一つのゴールに向かって一体となる雰囲気、臨場感…なんとも言えないあの緊張感の中にいる自分が好きです。時間と戦いながらの束の間、みんなの横顔をチラッと見て、ここに来て良かった、まだまだ半人前だけれど、この農場の一人になれて良かったと心から思います。


そうやって心と体をたくさん使ってがむしゃらに生きている"今"、3年前これから先に何か良いことなんてあるのか分からなかった自分に、大丈夫だよ!ちゃんと生きてるよ!よく頑張ってるよ!と伝えたいです。


そして、多くの人に農場の野菜が届き、私が日々この農場の野菜の美味しさや仲間の賄いを通して料理の奥深さに感動しているように、のらくら農場の野菜が豊かな食事風景の彩りになれたら嬉しいです!


久保未希子


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