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【1月号】好きな『日常』がごちそう

ちょうど1年前、反省と抱負を胸につぶやきました。さて、それから1年。どんな日々を過ごし、感じ、呼吸してきただろうか...。


季節は春。今季も育苗担当をしながら、スナップエンドウを担当。すずらんのような白く可愛らしい華を空へと可憐に咲かせ、見た目はスラリと食感はプリッと、優しく強い甘みの子どもたちをたくさん実らせました。


夏は果菜類のおびただしい収穫と出荷に一日中追われ、嬉しさと忙しさの悲鳴が脳内でガンガン反響。これに尽きます。


秋はまるでブーケ!ニューフェイスのカリフローレが登場。加えて根菜、葉物が再登場。異様な暖かさゆえに、いつまで経っても畑に居座る虫さんたち。おかげでお肌は虫食いだらけ。規格外となり畑で生涯を終えていく。次の命へ繋がらなかったもの達は、来季の命の肥やしへと生まれ変わり、農業は続く。そして、甚大な被害をもたらした台風の襲来...。農場も佐久穂町も長野県も全国各地で大変な被害が及んだ。改めて自然の脅威と恩恵、電気という便利なシステム、灯りという温かさ、人情という優しさ、自宅で生活できるという喜びを、普段は当たり前と思いがちだけれど、実はどれも尊く奇跡であるということを体感しました。


そんな日々を過ごしていたら、いつの間にやら季節は冬へ。あのお花畑のように色づいていた山たちは、水墨画のような景色へと。暗くて、寒くて、寂しくて、悲しくて...季節の移ろいと共に心も浮き沈む。自然界と人間が一体となるとこんなにも共鳴し合うのかという驚き。けど、そんな真冬でも時折顔を覗かす柔らかい陽ざし。穏やかで、優しくて、温かい...まるで、大丈夫、大丈夫だよって応援してくれているかのように。色を失ったようでただ潜めていただけ、紡ぎ合わせるかのように優しい色は広がり、寒空の中、桜の木は既に芽をつけ次を見据えている。なんと力強く心強いのか。


アラサー突入。そろそろ自分の体と心に向き合う時間を大事にする。ハーブ、お灸、座禅、西語、薬膳...覗き込んでみる。興味という思いを、行動に移し替えてみる。思っていた以上の面白さ、奥深さ、一緒になって楽しんでくれる人への感謝、素敵な出会い、生きるのって悪くない。日々を過ごすだけで精一杯、他のことなんて考えられない、そう思う日もあるけれど、自分が動けば何かがちょっとずつ変わることがある。その変化は自分に、そして人へ。そうやって一度しか来ない今日を生きていく。『日々是好日』この言葉を頭の片隅において過ごした一年。思考を、捉え方を、プラス方向に意識するだけでまるで別世界を見ているかのよう。小さなことが幸福となって、大らかに、穏やかに過ごせることに気がつきました。たとえ屋根裏にネズミが走ろうとも、同じ生き物。長野の冬は寒い。暖かいところを求めるのは皆同じ。ならば共に暮らそう。ガリガリガリ、トコトコトコ...音を聞くたびに発狂寸前だった私がここまでなれたのは、恐らくこの土地のおかげだろう。今まで住む場所にこだわりを持ったことなどなかった。どこも一緒だと思っていた。目の前に存在するものだけを見て生きてきた私にとって、目に見えない人の温もりや心の動き、自分ですら見えてない自分自身。これらを感じる感覚は、新鮮すぎて戸惑ってしまうこともあるけれど、この変化を楽しみながら、あの言葉をまた思い出しながら、ここで過ごしていければと思う。


カーリー

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