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【2023年7月号】「ロマンにあふれている」


↑ジャガイモ収穫の休憩中。畑で大の字になるのは最高です。


忘れられない光景があります。

 初収穫のキャベツをちぎって食べた先輩2人のハイタッチ。「よっし」と言ってしていたそのハイタッチから、「よっし」以上の思いが伝わってきて感動しました。そのハイタッチにどんな思いが含まれているのか、農場に来たばかりの私は知りませんでした。ただ、来年には私もそんなハイタッチがしたいと強く思ったのを覚えています。

 そして1年が過ぎて、農場に来て2年目を迎えました。24歳、茨城県出身、真歩です。

 果たして、この光景から1年後、キャベツを収穫して私もハイタッチができたのか、私のこの1年と、私が日々感じてワクワクしている畑のロマンのことをみなさんにお話してみようと思います。


 真っ暗で寒い、12月の午後5時。

 ザッザッザッザッ

 左手に袋、右手に小さなスコップを持って、二人ペアで畑を走り回りました。土壌分析のための土採取です。全てここから始まります。土を集めて分析をして、野菜それぞれのための土づくりの肥料が決まります。

 任された全ての畑を回った後、大きな畑の真ん中で大の字になりました。作物は何もない土の上。星の光以外何もなかったような気がします。これからこの畑でする作業が楽しみでしょうがなくて、ただひたすらにワクワクして、「何もない畑にロマンが溢れている!」と気づいて心躍りました。


 1月になって、私は育苗チームに入りました。

 何個まいたか分からないたくさんの種たち。ハウスで育てた後、無事畑にでて、ぐんぐん育って畑を彩り豊かに染めていきます。葉ネギもレタスもキャベツもその他たくさんの作物を播種しました。

 そう、キャベツ。土採取から、肥料散布、播種、育苗、虫よけのためのネット張り、定植、収穫。一年前には知らなかったキャベツができるまでの最初から最後までをほとんど経験しました。あのハイタッチ!!ほとんど全部関わったら、収穫して食べる時の感動はそれはそれはすごいんだろうなと期待していたけれど、結果は案外そうでもなかったです(笑)なんせ作物の量が多くて、播種する量も何千個もあって、一個一個に感動する暇がありませんでした。まだ知らない作業や、気づいてない過程があるのだと思います。なので、冒頭で書いたハイタッチはまだしていません。いつか「よっし」ってハイタッチしたいなあ。

 けれど、作物を収穫する時、野菜を友達にあげる時、その感想をもらう時、1年目とは違う感情になっています。6月に、4年ぶりに開催した収穫祭で物販をして、私は初めて自分たちが作った野菜を買ってくれているところを見ました。お客さんが、かごにたくさん野菜を入れていたり、並んだ野菜を見て手にしていたりする場面を初めて見て、涙がうるっと出ていました。何とも言えぬ感動がじわじわと心を満たしていました。初めて、自分が日々している作業が報われたような、そんな気持ちになりました。毎日していることに意味があるんだと思えて、すごく嬉しかったです。

 野菜を収穫するまでには、途方もない様々な作業とたくさんの人が関わっていて、それらが全て繋がって一つの野菜が育つこと。2年目になって知りました。今お客さんが手にしている野菜は、12月に土採取した時から始まっていると思うと、農作業ってなんとロマンにあふれているんでしょうか。


 今年ののらくら農場のテーマは「農業しよう」です。

 私も農業がしたい。去年、紀行さんが言っていました。「仕事の二軸を持つと良い。後輩ができたときに、その二軸を糧にやっていけるようになるから」と。

 私は1つ、これだけは絶対に守りたいというものがあります。農作業をワクワクなしでこなすようになったら、もう違う場所に行こうという気持ちです。私は農作業がすごく好きで、ワクワクした状態で畑を走りたい。いつかこれをこなすようになったり、早く帰りたいと思うようになったりした時は気をつけようと思っています。楽しめなくなったらやめる。これが1つ目の軸だと思います。去年ある先輩が言っていました。「2年目は作業になるよ」と。2年目の私はどうだろうか。こなしていないか?作業になっていないだろうか?

 のらくらで農業を楽しむ。それに尽きる2年目だと感じます。去年とは違う2年目のワクワクを味わっていきたい。また別の先輩が、「1年目でちょっと知識が増えたら、2年目はそれ以上に楽しさが増す」と言っていました。まだまだここから。私の好きな畑のロマンをもっと味わい尽くしたい。



 最後に、いつも野菜を買ってくださる皆さま、本当にありがとうございます。消費者は生産者の顔が見えていないと言われるけれど、収穫祭を機に、生産する側も消費者の顔が見えていなかったと気づきました。顔が見えることが必要なのか分からないけれど、ただ出荷して終わりなのではなく、誰かのもとに届いていると実感すると、やりがいと幸福を感じるなと思いました。なので今度、卸先のカフェや店舗に行って、自分達が育てて出荷した野菜たちの届く先を見に行ってみようと思います。

 

 食べているものをつくるってロマンにあふれている!ロマンのある仕事をしている!この道を選んだ自分を誇りに思います。


真歩


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