先日、長野県小諸市のわざわざさんで、トークセッションにお呼ばれしました。わざわざさんは、畑の真ん中にぽんつんとあるパンと日用雑貨のお店です。田舎でパンと雑貨なんて憧れるような業務形態ですが、僕が考えるに最も難しいはずなのです。ところが、とてつもない工夫の積み重ねで、「田舎でこんな経営できるのか!」と思わせるくらい素晴らしい取り組みをされています。
福岡県に宝島染工さんという草木染めの工房があります。普通、草木染めというと個人が芸術家のようにやっているケースが多いのですが、ここは数人のメンバーで運営されていて、大手アパレルメーカーがOEMで仕事を依頼してくるような「ミッションをこなす能力がある工房」さんです。
この3者が共通している点を、わざわざの平田さんがまとめてくださいました。
一人や夫婦から新規事業として初めた
事業を継続して行っている
従業員を10名前後雇っている
小規模事業者には少ない、ある程度の生産力がある
売上が5000万円以上ある
共通点の中の特に4のところ。ある程度の生産、大手さんのように大量生産は全然できません、でも家族経営よりはもうちょっと多いですよ、ということころにスポットが当たりました。一言にすると「中量生産」。
わざわざさんが、糸業者さんの倉庫に大量の質の良い在庫糸があるのを発見して、中量で生産できるメーカーさんに持ち込んで「残糸ソックス」というのを作ってしまいました。面白すぎる。ミッションとして数千枚の草木染めを出来る工房が日本に極めて少ないことから、大手アパレルメーカーさんが10人位組織の宝島染工さんを頼って仕事を依頼してくるというのはとてつもなく痛快です。
のらくら農場でも面白い逆転現象が起きました。以前は、この時期は葉野菜の代表である、小松菜・ほうれん草が圧倒的に売れておりました。ここ数年、春菊をとてつもなく美味しく作りたいと思ってみんなで研究を重ねてきました。さらに、この時期のカブ。フルーツのようなカブを作りたくて、新しく専用の種まき機をかったり、洗浄機を買ったり投資しました。設備投資できたのは「中量を作る覚悟」ができたからです。通常は脇役のような春菊とカブが驚く勢いで売れるようになりました。(おかげで売れるはずと思った主役の小松菜・ほうれん草が余るという誤算!)
6月に開催した収穫祭では、大人20名子ども10名のご参加があり、旬の野菜とパンやハムをずらりと並べて「勝手にサンドイッチ」をやらせていただきましたが、やはりそこでもカブと、春菊タマゴサンドはご好評いただきました。中量を作る覚悟がなかったらできなかったなと思っております。
人の好みが細分化されている現代は、「質良い中量」で舵取りを軽やかに面白くしていく、というのが僕らの方向になっていくのかなと改めて感じております。
紀行
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