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【6月号】全力で「死なない」




のらくらに来て4回目の夏を迎えるメイです。去年の私は「死なない」をテーマに日々を送りました。幸代さんにそれを話した時にこんな言葉をもらいました。「命の危険を感じる機会がある事、人以外にも色んな生き物の命を感じられる事、命がけでやっている事。農業は『死』を身近に感じるいい仕事だと思う。」死というのは重たいもので、苦しさや悲しさを思い出すものでもあります。だから文字にする事をずっとためらっていたのですが、幸代さんの言葉のおかげもあって、私一人の内側から、人の目に触れる所に書き出してみたくなりました。

私は去年からは、機械手の一人として、トラクターに乗ったり、肥料散布や液剤散布の機械を扱わせてもらっています。機械仕事は危険と隣り合わせ。私も目の前で、服の袖が巻き込まれて腕を粉砕する直前で機械を止めた瞬間を見たことがあります。萩原さんもこの春、トラクターに乗っていた時に氷で浮き上がっていた斜面が崩れて、もう少しで機械ごと数メートル崖下に落ちる所でした。機械事故はとても他人事とは思えません。農作業死亡事故で昨年270人が亡くなっていて、そのうち機械事故は70%近くを占めます(農水省2022)。

私は注意力散漫で運転や機械は上手とは言えません。大きな機械は中古住宅物件を購入できるほどの金額でもあり、恐ろしい。でも機械をやりたい。だから「死なない」。この言葉がいつも頭にあるおかげで、畑に入る時や道路に出る時の横転しそうな所、ちょっと疲れている時や狭い道など何かやらかしそうな時でも、気持ちがピリッとして安全確認ができました。自分だけでなく、周囲にいる人を巻き込む危険性もありますから「死なない」し「殺さない」。この2つは大袈裟ではなく、いつも意識しようと心がけ続けます。と言いながら先日機械を壊して数十万円…全力で働きます(涙)。

「死なない」はもう少しライトに、日常のあらゆるシーンにも応用が効きます。作業中つい右手だけを動かしてしまいがちで、左手の動作が死んでいる。除草の精度が低いとすぐに草が生えて、せっかくの除草の機会が死んでいる。ヌルっと作業に合流して注意事項を聞き逃す。確認不足で無駄足、無駄手間になると時間が死んでいる。「あれ?今の瞬間死んでるな」と気付く。それを積み重ねる。少しずつ作業の質を上げていけている気がします。

今から大根のタネを播いたら2時間後は別の畑でトラクタ―をかける、それから小松菜、大根、カブの収穫…どんどん移動して色んな作業を飛び飛びで行う。そういう多品目栽培。スピード感に乗るのも難しいし、その都度の準備に片付けと手間もかかります。道具や、作業タイミングも最適化ではなくベターな選択しかできない事も沢山あります。だからこそ、一手を減らし、正確にこなす。この積み重ねがものすごく大切。

一方で小さな積み重ねだけでなく、仕組み側にテコ入れする事ができたら、今は当たり前と思っている多くの労力を削減して、「いい野菜をいい状態でお届けする」という本質的な部分に割く時間が増やせるのかなと、考えさせられる事もこの冬の間にいくつかありました。

まずはタマネギ選別機の導入。600g・400g等をその都度計量して袋詰めするのではなく、収穫したタマネギを機械で大きさ別に選別してしまい、S玉なら5玉、L玉なら3玉、野菜セットに入れればいいという仕組みで、小分け時間の削減と袋の削減に取り組めそうです。提案したカケル君お見事。選別機なしでは難しかった袋詰めなしの小分け。ゴミになる野菜の袋が、実は私もストレスだったので楽しみな取り組みです。上手くいきますように。袋がなくて不便というお客様もいらっしゃるかもしれませんが、こんな背景をご理解いただけますように。

それから、のらくら農場オリジナル野菜袋にケール、ピーマン、小松菜、かぶ等が加わりました。裏面にレシピが書いてあるので皆様にも楽しんでいただけたら幸いです。これは、野菜の出荷の際に生協さんなどのお取引先によってはトレーサビリティの観点から「産地名 作物名 生産者名」を書いたシールを貼る必要があったのですが、その省略に繋げることができました。シール貼りが地味に大変で、週に10人6時間とか、それ以上かけていたかもしれません。法律を調べたり、お取引様と丁寧に相談したり、皆の努力の結晶、この冬の革命の一つです。

こういった積み重ねがのらくら農場の強味なのですが、死なないシリーズで何よりもずっと大切なのが、モチベーションを死なせない。ご機嫌を死なせない。のらくらに来てからというもの、皆のモチベーションアップの上手さに驚かされ続けています。とにかく褒める。とにかく認める。安心感を与え続ける。挑戦する気持ちをそっと応援する。しっかり休む。しっかり頑張る。美味しい・楽しい・嬉しい・困ったを分かち合う。踏み込んで助ける。「足を引っ張りあう」の真逆で、「背中を押しあう」みたいな風潮です。野菜が大好きで、栽培が面白くて、皆で働くのが楽しくて、皆一生懸命畑に通っています。のらくらの野菜はそうやってできています。

今年、恐ろしいほどの資材の高騰に直面する中、萩原さんは人件費や設備投資に大きく注力する事にしました。のらくらの全員の生活や仕事が、いい意味で楽になる為の規模拡大、設備投資だとよく話してくれます。難しい時にもスタッフに真剣に向き合ってくださる事、感謝で胸がいっぱいです。この経営判断の緊張感を共有してもらえるおかげで「全力で売って売って、ロスを頑張って減らして、皆で稼ごう」そんな話がスタッフ間で自然と巻き起こっています。モチベーションを上げるってこういう事なんですね。お客様に満足していただける野菜をしっかり供給できるよう全力で向き合っていきたいです。

草木や虫や野菜達の育つ姿、死にゆく姿、それも毎日全身で感じます。生命のダイナミズムを感じ、自分の生きている事を確かに感じます。農業、本当にいい仕事です。

皆様の人生が、食卓が、豊かに彩られますように。いつもありがとうございます。


塚原芽衣

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