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【2024年8月号】ナンデダロウの先



のらくら農場でケールの担当になっています。サリーです。前職でもケールの栽培をしていました。ここ5年間はケールと過ごす時間が日常の中で、最も高い割合を占めています。ケール畑を見ると、心の奥で高揚を感じます。あの葉のワシャワシャに。


ケールの何が私を惹きつけるのか。


 ケールの栽培は、他の野菜と比較して難しく感じます。小松菜と比較してみます。ケールも小松菜も同じアブラナ科に属します。親戚みたいなものです。どちらも、アオムシの大好物です。アブラムシもつきます。小松菜は、アオムシ対策として種を撒いてすぐに防虫ネットをかけます。ネットの裾は土に埋め、破れている箇所はテープで塞ぎ、念入りな対策をします。また栽培期間が短いため、アブラムシが増える前に取り切ることができます。

 それに対してケールは、最大1.5Mほどの高さに成長するため、ネットをかけません。また、1株の出荷期間が5月から11月で長期間に渡ります。アオムシとアブラムシから見たら、ケールは出入り自由の食べられる家です。素敵な暮らしができそうです。そのため小松菜とは異なる考え方で、この問題に向き合う必要があります。


ケールはネットで防御することができません。無防備です。そこで、まずは攻撃は最大の防御という考え方で向き合います。攻撃、すなわち収穫です。アオムシもアブラムシも寄り付く時間を与えずに、収穫してしまう。もし、そこに住み着いた虫がいたなら、その家ごと切り落としてしまう。そして、収穫後に納豆菌の仲間を散布することで、この家に住みづらくする。


収穫の頻度が重要です。住人たちは、暗くて蒸れている空間を好みます。ケールは成長速度が早く、ドンドン葉が生い茂っていきます。収穫を進めていかなければ、住みやすい空間がドンドン生まれます。住人が押し寄せ、増殖していきます。ただ、出荷量と生産量が一致することは稀です。生産過剰の場合、葉を切り落としていくことをします。心苦しいですが、先のことを考えるとそうすべきタイミングがあります。


収穫後の管理も気を使います。気温が高い時期は収穫後すぐに遮光をし、水をかけ、冷蔵庫に搬入します。ウカウカしていると、熱にやられてすぐにフニャフニャになってしまいます。冷蔵庫の保管では、しっかりビニールをかぶせ、直接風が当たらないようにし、乾燥を防ぎます。空気が流れないよう、ピタッと丁寧に袋を被せます。


冷蔵庫に入れたあとも作業が残っています。追肥作業です。長期間にわたって収穫をするため、必要な養分を追加で足します。ケール用に特別な設計で肥料を用意しています。それにより常に大きく柔らかいのに、病害虫に対する防御力もある葉を作ります。冬の間に専用肥料を2トン用意しました。20キロの袋が100袋です。


栽培が困難な時期に注文が多くなります。特に7月〜9月はその時期です。アブラナ科の野菜は夏の栽培が困難です。この時期は、ケールの栽培できる場所が限られているため、注文量が増えます。とはいえ、佐久穂町でも栽培が難しい時期であることに変わりありません。増える注文、高まる難易度。腕の見せ所がこの季節です。


ここまで、ケールの栽培のムズカシさについて語ってきました。これがどのように『ケールの何が私を惹きつけるのか』につながるのか。


ムズカシイことは、オモシロイことなんでしょうか。ムズカシイことは、多くの時間を費やす必要がある。頭を使う必要がある。心を使う必要がある。いつも頭にあるのは、ナンデダロウ。それを繰り返す中で、人はその対象に惹きつけられていってしまうのではないか。好きになってしまうような働きがあるのではないか。最初は分からなくても、苦しくても、つまらなくても、問い続ける中で惹かれざるえないのではないか。みなさんは、どうでしょうか。


明日もケールと過ごしてみます。あのワシャワシャを見に。

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