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【2024年5月号】チャンスを逃すな




期間スタッフとしてのらくら農場に来たのが3年前。農業に魅せられ、働き続けられるチャンスを与えてもらい、とりあえず全力で農業に向き合ってみようと決意してから3年が経ちました。

底知れない農業という世界に、僕はたぶんまだ、片足も突っ込んでない。

刺激的な日々には幾つもの起爆剤があり、このまま終われるはずもなく4年目に突撃させていただきます。


最初の起爆剤は「土」でした。

“作物を狙った味にするために、土を科学的に分析して、作物にあった土を作る”

そんなこと本当にできるのかよと、H₂Oが何なのか、三角形の面積の公式すら怪しかった頃の僕は思っていました。でも、少しずつ農業にのめり込んでいくうちに、ホウ素という元素の存在や、台形の面積の公式を知り始めた頃くらいから、“野菜の味は狙える”は気付けば確信に変わっていました。

幾つもある肥料の中から、何をどれくらい与えてどんなタイミングで何をするか。

更に、そもそもその土が持つ性質や菌、微生物。そして作物の性質。

想像もしていなかった、あまりにも科学的な土作りは、無限のチャンスと終わりなきゴールを与えてくれて、土という起爆剤が僕を爆発させました。農業おもしろいぞ。



2つ目の起爆剤は「天気」。

去年は大干ばつで酷暑の厳しい年でした。

気圧という言葉すらピンと来てなかった僕は、雨というものが作物にとってどれほど貴重か、農業がどれほど天候に左右される仕事かを理解できていませんでした。

天気予報は本当にすごい技術で、無かったらと思うとゾッとします。気象予報士さん、本当にいつも有難うございます。でも、標高1000mの目まぐるしく変わる天気を、畑ピンポイントで的確に予報するのは、きっとまだ遥か未来の話。

毎日天気予報をチェックしても、予報通りにはいかないことばかりです。

そもそも、雨前や雨後に本当にすべきことを見極められていない悔しさを知りました。

一手間違えたら、詰みの農業は毎日が最後のチャンスだということを知りました。

あぁそうか、この場所の天気は、この場所にいる僕たちが雲を見て、空気を感じて予測しなければならないんだ。

僕の農業において「窒素、リン酸、カリ」よりも大切な3大要素

「想像力、判断力、機動力」の存在を知りました。

気付けば、パスカルもエルニーニョ現象も理解していました。

天気という起爆剤がまたも僕を爆発させます。農業ってやっぱりおもしろいぞ。


3つ目の起爆剤「チーム」。

僕たち20人ほどのメンバーは働く理由も違えば働き方も違う。年齢も性別も、色々なことがバラバラです。でも全員美味しい野菜を作りたい、そして食べてほしいという気持ちは何があっても揺るがない。

そんな僕らが悪天候続きで思うようにいかなくて悔しさやもどかしさが沸点に達している状態で、このチャンスは逃せないと全員で一つの目標に向かうとき、それはまさに爆発。

これ終わんねーよみたいな作業が簡単に、そしてなんだか楽しそうに終わってしまうような、科学では証明しようのない奇跡を何度か目の当たりにしました。

僕の農業において「光、二酸化炭素、水」よりも大切な3大要素

「農業が好き、仕事への誇り、最高の仲間」の存在を知りました。

因数分解はまだわからないけど、のらくら農業におけるマンパワーの1+1は明らかに2ではない。

もしこのチームの爆発を、自分たちの意思で引き起こすことができたなら、きっとどんなチャンスも逃さないな。これからは僕自身がみんなの起爆剤になりたいと、クワをフルスイング、畑でヘッドスライディングしよう思いました。

チームという起爆剤が僕を爆発させます。のらくら農場って最高。



2024年、新たに夏秋いちごの栽培に挑戦することが決まり、きっと起爆剤だらけの未知なる世界にそそられ、気付けばいちご担当に立候補させてもらっていました。

数日後、紀行さんから神妙な表情で「いちご担当ちょっといい?」と呼び出された日がありました。栽培や経営に関する話かなと身構えて席に着くと開口一番、

「いちご担当の一番のミッションはとにかく楽しむこと。経営的なことは後から考えようぜ」

これまでとは何かが違う大きな爆発。

心が爆発する音が鼓膜まで振動し、そのあと紀行さんがなんて言っていたかよく聞こえていませんでした。

きっと爆発には人それぞれの火種が必要で、僕にとっての一番大きな「楽しさ」という火種に直接起爆剤を放り込まれた気分でした。

もしおいしいいちごが収穫できたとき、心からどんな音が聞こえてくるのか今から楽しみです。


とにかく楽しめという最高のミッション。このチャンスを逃すなよ。    矢澤竜星

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