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【2024年1月号】「ぶっ飛び」



代表の萩原紀行です。一年ぶりの畑のつぶやきの原稿です。濃い一年を振り返ってみます。


映る

 NHK BSの「コウケンテツの日本100年ごはん紀行」に出させていただきました。東京メトロのフリーペーパー、雑誌「うかたま」に続いて、商品よりもまかないが注目されております。(笑)料理家のコウケンテツさんが日本各地に赴いて、100年後の日本の残っていてほしい素材や料理を取り上げていく番組です。コウさんに聞きました。「15年間の番組で印象に残っている料理ってなんですか?」「それが料理や食材のことは正直あまり記憶にないんですよ。ですが、関わって下さった人は全員覚えているんですよ。」ぐっと来ました。

 テレビの取材があるとしたら、「ポツンと一軒家」か「サラメシ」来てくれないかね、と皆で話しておりましたが、素晴らしい番組に取り上げていただきました。


塗る

 出荷場が完成しました。総工費6000万円。建設途中にもどんどん資材が上がっていくので、最後外壁の塗装は農場の皆でやりました。畑の仕事も迫っているので、業者に頼むか悩んだのですが、圃場リーダーのエーちゃんが、何故かミオちゃんに聞いた。「ミオさん、壁塗りたいですか?」「塗りたいです。」「じゃあ塗ろう。壁も畑も間に合わせる!」かっこよかったなー、あのときのエーちゃん。それに賛同した皆のエネルギーも良かった。


生まれる

 スタッフのカーリーとタカちゃんに子供が生まれました。コハルちゃんといいます。なんとまあ愛想がいい子で、赤ちゃんゲージの中でひとりでお利口さんによく遊び、よく笑うこと。出荷が忙しい日は、カーリーが赤ちゃん連れで仕事を手伝いに来てくれるのですが、コハルちゃんが来る日を「コハル日和」といっています。休憩中は皆にかまわれて、みんなに抱っこされて。抱っこしていたら、コクンと眠ってしまったときの可愛さときたら。離乳食をあげるのが楽しみな僕です。


ねじ伏せる

 昨年というわけでもなくここ3年ですが、資材などすべて値上がりしました。500円台で買えていた肥料が1000円。2021年の春に、僕が予測した値上がりと大体大枠では一致しました。3年前と比べると野菜の価格を1.4倍にしてちょうど同じくらいの利益率。ところが世の中、お米と野菜だけは値上がりしません。当然農家は一気に減っていくフェーズに入りました。この先、ボロボロ農家は辞めていきます。2024年の倒産予測ランキングの栄えある第一位はズバリ農業。のらくら農場はどうしたかといいますと、この3年で人数を増やさずに売上を1.5倍にして力技でこの状況をねじ伏せました。力技も限度があるので、さあどうするか。


あがる

 つらいあがりだけでもありません。毎年改善点をあげていくのですが、のらくらチームのメンバーがあげてくれた改善点は、2021年267,2022年167,2023年460、3年合計で894にもなりました。細かいコツコツとしたものが大半ですが、本当に知恵を絞ってくれたと思います。すごい奴らです。


なくなる

 昨年の暑さは僕の農業人生でも過去最高でした。最高気温と最低気温がコピペしたように二週間先までずっと同じ天気予報。3ヶ月半に及ぶロングラン干ばつ。水やりのポンプガソリン代が100万円を超えたのではないかと思います。春菊の種を蒔いても地温が高すぎて芽が出ない。なんとか水やりをして発芽させた大根が暑さと乾きでなくなっていく。一言でいうと「春と秋が消滅してきている」。これから、青果店の経営リスクは「売れない」以上に「作物が集まらない」が浮上してくるのではと思います。この天候でたくさんのロスがありましたが、結果的には総出荷量、販売とも伸びるという奇跡でした。のらくらチームの粘り腰でした。


 笑う

 少し家族のことを。3人の子供のうち、上二人は家を出て暮らしていて、残るは3番目の長女。動物が好きなので、高校の進路をどうしようかと考えている娘に、「通学圏内に、農業科のある高校があって、牛とか鶏とかの動物も飼っているみたいだよ。」と妻が伝えると、俄然興味とやる気が沸いてきたようでした。そのうち「鶏肉を作りたい」と言い始め、それを聞いた娘の友達が、鶏を絞めてお肉を食べる会に誘ってくれました。実際に見て体験した後もその気持ちは変わらずで、進路についての三者面談でのこと、先生から「第一希望の農業高校に行って何をやりたいの?」と聞かれて「鶏を絞めたいです。」と答えたそうな。(この時点で僕は爆笑)先生「・・・。でも、鶏の食肉加工はその高校ではやってないかもしれないよ。」と言われると、長女「じゃあ、牛で。」(笑いすぎて声が出ない)


 そういえば、小学一年生の頃、通学時に手を繋いで送っていた時、家の前の佐口湖に毎年たくさん飛来してくる鴨を思い出したのか、「お父さん、みーちゃんはね、鴨を手で捕まえられる大人になりたいな。」とつぶやいた。「それは素敵な大人だね。」「そうだよね。」「そうに決まっているよ。」このときの会話を実現しにいっているのか。


 僕は「幸せ」と「楽しい」の基軸が希薄すぎて、子供に幸せになって欲しいと思う気持ちが薄い。「面白い」がトップになる。「笑えるくらい面白く生きてほしい」が断然強い。長女を見て思いました。「じゃあ牛で」。これくらいぶっ飛んだ方が農業だって面白い。さあ、どうぶっ飛ぼうか。

のらくら農場代表 萩原紀行

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