top of page

【10月号】いんげん失格​

初めまして。のらくら農場で生まれた萩原駆です。大学2年生の夏休みにのらくら農場にお邪魔しました。コロナ渦中だったので、家に帰ると自分の通った跡を母が消毒液を振りまけて辿ってきました。まあ、それは仕方のないことですけれど、母親に消毒液をまかれるのは何とも言えない気持ちでした。


二週間の自宅待機後から働かせていただきました。不思議な気持ちでした。家と庭が仕事場に変わる瞬間でした。暑かったり雨が降ってきたら直ぐに家の中に入るのが普通だったのに、その瞬間以降、暑くても畑を耕し、雨が降っていても収穫をしなければならなくなったのです。


仕事中はみんなにバレないように唸ることが良くあります。(もしかしたらバレているかもしれませんが。だったら恥ずかしいです。)U字のインゲンを見て僕は唸ってしまいます。人間は豊かになったなと思いながら、そのインゲンを断腸の思いで「はね」ます。僕は生まれてこの方「はね」野菜を食べて育ってきたわけですから、「これは出荷できるインゲンじゃない」と判断する度に、過去に自分が食べたインゲン達にまで「インゲン失格」の烙印を自ら押している気分になるのです。


野菜達は人間に食べられて幸せなのでしょうか。時々妄想します。U字のインゲンは人間に食べられないように実を曲げて、わざと「はね」させているんじゃないかと。人間がインゲンを「インゲン失格」と「はね」ているように見えて、インゲンが人間を「人間失格」と「はね」ているのかもしれません。実を曲げ、色を変え、虫に協力してもらってインゲンの方が「人間失格」の烙印を押している気がしてなりません。もしそうだったら、僕はとても光栄な人間です。U字のインゲンに「食べる」ことを許され、U字のインゲンを毎日のように食べていたのですから。そう考えると、光栄な食べ物の多い生涯を送ってきました。(最近色々な本を読んでいるのですが、中でもインパクトの強い太宰治の「人間失格」に妄想が引っ張られてます)そして今は農場のみんなが作ってくれる「まかない」でもU字のいんげんは本当に美味しいランチとなっています。


かける

Comentarios


bottom of page