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【10月号】農家の雇用

<はじめまして>

千葉県市川市から佐久穂町に来て早や8年目を迎えます、「石井勇次」と申します。生まれ育ちは東京の江戸川区出身です。年齢は萩原さんと同じ47歳です。妻と子供2人の4人家族です。宜しくお願い致します。 <農業をはじめたきっかけ>

祖父母が農業を営んでいたこともあり、幼い時から畑で祖父母が農作業をしているのを見てきました。そのこともあってか成人してから、もしかしたら農業をするかもと人にもらしていたこともありました。それから20年の年月が過ぎ、休みを利用して長野県の伊那にある民泊施設に泊まりに行ったことがありました。その民泊では雑穀や野菜を栽培していて、朝食や夕食にはその雑穀や野菜を使った料理が並びました。また、近所の農家さんでいただいた「にんじんジュース」は、今まで飲んだことのない、にんじんの香りと食感とで驚いたことを今でも覚えています。自分の作ったもので人に喜んでもらえたらうれしいなと思ったことがきっかけで、そこに祖父母の姿も重なり、農業の道に進みました。 <驚き>

私の中での農業とは、ひたすら地道に耕すイメージしか思い浮かばず、萩原さんとの最初の出会いである有機栽培講習会に参加した時は衝撃を受けました。なんと元素記号と化学式。C(炭素)、H(水素)、O(酸素)のCHO(炭水化物)とN(窒素)が結合してCHON(タンパク質)といった化学式。その時は、まったくもってチンプンカンプン。ノートにひかえることで精一杯でしたが、帰りのバスの中でこの萩原さんのところで研修することを決心していました。その翌シーズンから2年の研修開始。鎌の使い方から、生育診断、収穫・出荷、機械操作までいろいろなことを学びました。記録したノートが10冊以上となり、のちに就農してから何度も見返すことに・・・ <それから>

研修を終え、独立。就農して5年を経験し、畑の土壌や水路環境、作物ごとに変化する肥料設計や栽培方法、出荷形態などいろいろなことを踏まえながら、作業の効率化や栽培技術を向上するために講習会に参加したり、昨年度の日誌を見返して作付け方法の検討をしたり。それに伴い毎年何かしらの農業機械を導入。毎年毎年さまざまな経験の積み重ねと投資が必要であることに気づきました。特に人材の雇用については、人手不足が問題で、この地域周辺で募集をかけるも見つからず、県外から希望があったとしても住んでもらう環境がないため、募集ができないという悪循環に陥っています。それはどこの農家も同様で、であれば自らが農家へ勤めることを決めました。 そのことを萩原さんに相談したところ、心よく受け入れていただいたので、今年度からのらくら農場の萩原さんのところにお世話になることになりました。わずか5年の独立でしたが、その5年の月日の間にのらくら農場の栽培方法はずいぶんと進化しており、スタッフも10人に増えておりました。 <農家の雇用問題>

農家として安定的に収入を得るには、野菜をより多く生産し出荷することが必須となります。そのためにはやはりある程度の畑の規模(面積)が必要で、畑の規模を増やすと必然的に農業機械や人の手が必要となってきます。肥料散布やマルチ張りなどある程度農業機械で何とかしのげるのですが、野菜の小分けや梱包、伝票作成など細かい作業はどうしても人の手が必要となります。そこで人材を募集することになるのですが、この地域は野菜を栽培する期間が6月から12月の7か月、準備期間を含めておおむね10か月の期間になります。特に人手が不足する期間はそのうちの6か月。雇用するにも期間雇用のパートやアルバイトが多く必要になります。のらくら農場は3年前に古民家を借りて期間雇用の寮として利用していますが、宿泊施設を確保できない農家は全国募集ができず、周辺地域からの車通勤できる人を条件にハローワークや民間求人広告に掲載することになります。私の場合、1年かけて募集をしたのですが、周辺地域からの希望者はなく、県外から数人連絡がありましたが、宿泊施設がないためお断りせざるを得ませんでした。民間のアパートを借り上げても期間雇用が終了する冬の間の家賃を支払わなくてはならず、古民家を借りるにしても水回りのリフォームが必要だったりで、資金面で断念。 農業をするうえでいくつもの壁を乗り越えなくてはなりませんが、人材の雇用も大きな壁となっており、多くの農家さんがかならず一度は考える問題です。その問題をどのように超えるのか、超えられるのか、自分に照らし合わせ考えながら、日々の畑作業に追われています。


石井勇次

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