​2018

 

​2021

 

1月号

ONION & UNION

ん~~~ん ♪♯☆ 思わずその喜びが声に出る。

目は優しく閉じて、鼻の穴は心なしか広がって、唇は優しく瞑って口角が上がり、まるで心が喜んでいるかのように頭は左右にゆっくりと揺れる。この感嘆を文字に表すと『ん』から始まる気がする。アイウエオの50音の最後の音。そしてこの文字から始まる言葉は他になく、それだけ特別な至福の音、そして至福の感嘆。その特別な音を毎度出すくらい私にはたまらなく好きな瞬間があった。それはあるものの箱詰めの瞬間。思わずその箱に頭を入れて息を深く吸ってしまうほど浸っていたくなる。一言で言い表してしまうのが勿体ないのだが、優しいコンソメの香りがするのだ。この香りは、台所からくるのではなくて、作業場から、それも段ボールの中からしてくるのだ。しかも、まだ調理もしていないのに。その瞬間を至福にしてくれるのは玉ねぎ

去年の玉ねぎはどうやら苦戦したらしい。私は通常を知らないので何がどう大変だったかを後々知ることになるのだが、去年の玉ねぎは董立ち(トウダチ)してしまったのだ。玉ねぎの中心部分に固い芯が出来てしまい出荷できないものとなってしまうことらしい。

 あれは農場の短い夏の7月、畑にはちびっこが刀として遊ぶには十分な硬さの塔がそびえ立ち、背丈より少し短いこの塔の先に玉ねぎの丸く白いかわいい花が咲いていた。花が咲いた畑は広大なので、それはそれで圧巻の一言。なんならこの時、私は、これまで見たことのない背の高いお花畑を目の前に、綺麗だなぁなんてのん気なことを思っていた。

 季節が変わり少し肌寒くなってきた10月、玉ねぎの苗を植えた。植えると一言で書いたがこの作業は実に地味極まりなく、さらに果てしのない作業であり、この苗を手で一本一本植えて、実に13万本も植える。ふと顔を上げるとこんなにも進んだのか。と嬉しくもなるが、まだ先もそれ以上に長かったり笑 気の遠くなる作業だったが、なぜか私はとても好きな作業だった。左手で苗をほどき右手でテンポよく挿していく。

とにかく夢中にさせてくれていた。私はこのうち何本できたのかは知らないがとにかくその時を満喫していた。

 ふと、植えながら考えた。ついこの間8月に収穫したばかりなのに、もう植えているの!?と。そう、この地域では丸々1年の月日をかけて玉ねぎを育てているらしいのだ。10月に植えているのは来年のための玉ねぎ。こんな大変な作業を経て機械にも頼らず、いや頼れず、手で1本一本植えていく。。。。。そして思ったこの夏のことを。董立ちしてしまった玉ねぎたち。あぁこれは1年前に手がけてくれていたもの。。。。。あんな姿になってしまってさぞかしみんなは唇を噛んだことに違いない。そんなことに想いを馳せる。

やはり経験しなければ何も得られない。

その背景にはこんな苦労があったとはこれまで考えることもなかった。玉ねぎをはじめとする野菜はいつでもスーパーにあるものとして認識していたのも事実。手に取れる状態になるまでのストーリに想いを馳せる事で人に優しく、自然に優しくなって、素直になれて感謝も生まれいくようにも感じられた。

 私はこれまで日本は元より世界の多くの地でいろんなことを経験してきた。製薬会社勤務、薬剤師、これらの仕事を通じて体もそうだけど心が健康でない人の多さに驚いてしまった。その頃からの私のテーマが『心の底から健康』になり、それを探すべく導かれるかのようにインドでヨガに出会い、ベジタリアンの食生活を経験し、食事の大切さに改めて気づかされて、マクロビを習い、料理の楽しさに気づき、アメリカ、カナダでヨガの宿泊施設のメインシェフをさせてもらったりしてきた。全ては心の底からの健康はどういったものなのか、そしてそれに近づくための経験だったように思う。

 至福の時間をくれる玉ねぎの語源を調べたらラテン語で『union』の意。結合、集結、結び。玉ねぎは1枚1枚の皮の集合体であるので納得の言葉。 ヨガも語源を辿ると『結ぐ』という意味。ここでも2つが結ばれて嬉しく思った。

意識を呼吸と結ぶことも、マインドと心を結ぶことも、農作業を通じて自然との距離がぐっと縮み自然と結びついたことも、1年がかりの日々の作業のお陰また自然のお陰で玉ねぎは実を結ぶことも、ここでの個性的なスタッフ達との結びつきも、私たちは一人ではなく全てが結ばれ、繋がっているのだなと強く感じられた半年となりました。

今日もどこかで『ん~ん ♪』という至福の感嘆を発し、心を穏やかに美味しい毎日を過ごして、皆さんの心の底からの健康を願いたい。そしていつの日かこの経験が何かの形で実を結ぶ日がきたら嬉しく思う。(アユミ)

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